2023/04/26 11:59
わたしが家を出て一人暮らしをはじめたのは、18歳の春のこと。
料理なんてしたことなくて、家事はぜんぶ母親にやってもらっていて、もちろん生活力もお金もなくて、
そんな当時のわたしが引っ越して最初に向かったのは、アパートから徒歩5分の場所にあった巨大な100円ショップでした。
生活道具もろもろを購入し、台所道具一式も1000円ちょっとで揃えて、初めての自炊もスタート。
本を片手に料理をしては
「和食ってなんでも醤油とみりんでできてる...!」「お米って鍋で炊けるの...?!」などなど、ひとつひとつに衝撃をうけていた春...
から時は巡りに巡って20年。
毎日3食ごはんを作る。そんな暮らしを続けてずいぶんたった、
38歳のこの春、わたしはある台所道具を手放しました。
なんとそれは、
あの18の春に買ったものだった...!んです...。
100円ショップで買って以来20年も使い続けている、なんて意識はすでになく(日用品っていつの間にか見慣れすぎて無意識の領域で使っているもの、あったりしませんか)フト夫に
「ねえ。ずっと思っていたんだけどこのザルとボール、すご〜〜〜く使いにくいんだけど、なんでこれ使ってるの?」
と問われて、ハタ...と
「...これ、18の時に100円ショップで買ったやつだ...!」
と気付いた。
そんなザルとボール。
使い始めた最初から、使いにくいなあ...とは思っていたはずですが(100円ですし)その使いにくさ込みで日常になっていた20年。使いにくくもステンレス製で丈夫であったが故にこんなにも長く人生を共にしていたなんて...。
歴史を知った、夫は驚愕しつつも、
「さすがにこれ、買い替えようよ」
と提案してきました。
20年使ったけれど、不思議と愛着が湧いてもいない(だって使いにくい...)。
なので、素直にかつ全力で、今が買い替えのタイミングだ!とわたしも思い、ザルとボールと、ついにサヨナラしたのでした。
100円で買ったものを20年使ったのだと思うと、つぎに買うものも20年、いやそれ以上。
むしろ一生使いたい。
せっかく買うなら、使い続けても愛着が湧かないようなモノではなく、毎日、使う度に、愛着が増していくようなモノが良い。
と、しばらく悩み、ついに先日新しく購入したボールは
工房アイザワのWhite onionシリーズのS.M.Lの3サイズです。
(ザルはまだ検討中。ステンレス製のザルがないので、竹ザルを使用している現在。以外と竹ザルだけでもいけるかな?と思っています)
工房アイザワは金物産業で有名な新潟県燕市で大正11年に創業した、台所道具用具を作っている工房。
「機能と美は切り離せるものではなく、機能的に豊かなものは美しく、形の美しいものは機能的である」という理念のもと、作られている道具はどれも、シンプルで使いやすそう。なのにどこか心にひっかかる、独特な佇まいの道具たちが魅力です。
このボールたちはどっしりと力強い安定感がありつつ、白いホーローの軽やかさが合わさっていて
そして、裏の「工房アイザワ」の印がとても気に入りました。
白いホーローに、この日本語の大きな文字のバランスが独特なかわいさ。
混ぜたり、漬けたり、洗ったり、使わない日はないボールというモノ。
だからこそ触って気分がよいモノ、見る度にちょっと嬉しいモノ。そんなモノを使うと
台所に立つ時間がより前向きになるじゃない!と、感じています。
(20年、なんだったのか...)
ちなみにわたしは毎日のように子どものおやつを作るので、
ゴムベラも必需品。
ボールに合わせてゴムベラも新調してみたところ、こちらもとても気分よい。
持ち手がケヤキで、手に嬉しく、こちらも可愛い。
まだ使えるとも言えるものを手放すのはもちろん葛藤もあるけれど、でも時に心を鬼にして(?)愛着を持てないものは手放して、
ほんとうに愛着の持てるものを手にする。
20年も一緒にいても、愛着が育たないモノもあるし、
つかった日から愛着が湧いて湧いてしょうがないモノもある。
せっかくもつなら、どんどん愛着が育つ、そんなモノを持つようにしていこう、と改めて思ったこの春でした。
見渡せば、心を鬼にして手放したい、そして今後は一生物!を使いたい、そんな「モノ」候補はまだまだあるなあ...
なんて思いつつ。
ゆっくりじっくり考えながら台所道具に向き合っていきたいと思います。
ちなみにちなみに、
わたしがずっと使っている、ステンレス製の洗い桶。
考えてみたら、この洗い桶も18の春、100円で揃えたたくさんのモノの内のひとつだったのでした。
うちに来た人に「かわいいね」と言われることも多い、洗い桶。
若干小さめサイズでもう少し大きいのがいいな、と何度も思いつつ、ずっと使ってきた洗い桶。
独特な形、柄で、なかなかこういう洗い桶をほかで見たことがない...。
この洗い桶は、100円だったけど、とても愛着があります。
愛着が育つモノの理由は当たり前だけど、値段じゃないですね。
もちろん、これは一生モノ確定です。